お口のケア、サボるとどうなる?
歯周病・虫歯だけじゃない、全身に及ぼす怖い病気の話
「歯磨きをしないと虫歯や歯周病に…」というのは、皆さんよくご存知ですよね。
でも、実はお口のケアを怠ることが、もっと深刻な全身の病気に繋がる可能性があることはご存知でしょうか?
特に、子育てやお仕事で忙しいお母さん世代から、そのご両親の世代にかけて、知っておくべき大切な関係があるのです。今回は、くみ歯科クリニックが、お口の健康が全身にどう影響するのか、そしてどう守っていけば良いのかを、分かりやすく解説します。
この記事のポイント
お口のケアは、歯を守るだけではありません。
それは、未来の自分と、大切な家族の健康を守るための「最高の贈り物」です。
年齢ごとのリスクを知り、今日からできるケアを始めましょう。
口腔ケア不足で起こりやすくなる「全身」の病気一覧
まず、お口の不衛生が引き金となりうる全身の病気と、そのリスクが高まり始める年齢の目安を表にまとめました。
疾患名 | 主なリスク・特徴 | リスクが高まり始める年齢(目安) |
---|---|---|
妊娠中のトラブル (低体重児出産・早産) |
通常より早く、または小さく赤ちゃんが生まれるリスクが高まる | 20代~40代の妊娠・出産期 |
糖尿病 | 血糖値のコントロールが悪化する、または糖尿病を発症しやすくなる | 40代以降(30代後半から注意) |
心臓・血管の病気 (動脈硬化、心筋梗塞など) |
将来的に命に関わる病気のリスクが高まる | 40代からリスクを意識し、50代以降に注意 |
誤嚥性肺炎 | 食べ物や唾液が肺に入り肺炎を起こす(親世代で注意) | 65歳以上(特に75歳以上で急増) |
【20~40代は特に注意】妊娠中のトラブル(低体重児出産・早産)
これから妊娠を考えている方、また娘さんがいらっしゃる方には特に知っておいていただきたい、非常に重要な関連です。
なぜ起こるの?(機序)
歯周病菌による炎症でつくられる「プロスタグランジン」という物質が血液に乗って子宮に達すると、体が「お産が近い」と勘違いして子宮の収縮を促してしまいます。これが、早産や低体重児出産のリスクを高める原因です。そのリスクは、アルコールや喫煙よりも高いという報告もあるほどです。
どうすればいいの?(改善アプローチ)
- セルフケアの頻度
歯磨きは1日最低2回(特に就寝前)、デンタルフロスなどによる歯間ケアは1日1回行いましょう。妊娠中はホルモンの影響で歯ぐきが腫れやすいので、普段以上に丁寧なケアが必要です。 - プロフェッショナルケアの頻度
妊娠を計画している段階で一度検診を受けるのが理想です。妊娠中は、つわりが落ち着く安定期(妊娠中期)に最低1回は必ず歯科検診を受けましょう。
【30代後半から要注意】糖尿病との怖い関係
歯周病は「糖尿病の第6の合併症」と呼ばれ、互いに悪影響を及ぼしあう、非常に密接な関係にあります。
なぜ起こるの?(機序)
歯周病 → 糖尿病:歯周病による慢性的な炎症が、血糖値を下げる「インスリン」の働きを邪魔してしまいます。
糖尿病 → 歯周病:逆に、高血糖の状態は体の抵抗力を弱め、歯周病を悪化させます。まさに悪循環です。
どうすればいいの?(改善アプローチ)
- セルフケアの頻度
毎食後、難しい場合は少なくとも朝と就寝前の1日2回の歯磨きと、1日1回の歯間ケアを徹底しましょう。 - プロフェッショナルケアの頻度
糖尿病の方や血糖値が高めの方は、1~3ヶ月に1回の定期検診と専門的なクリーニングを受けることが強く推奨されます。歯周病を治療することで血糖値が改善することも報告されています。
【40代から忍び寄る】心臓・血管の病気(心筋梗塞・脳梗塞)
今は元気でも、将来の健康を考えたときに、最も気をつけておきたい病気です。お口の細菌が、全身の血管を巡って悪さをします。
なぜ起こるの?(機序)
歯周病で炎症を起こした歯ぐきの血管から、歯周病菌やその毒素が血液中に侵入します。これらの悪玉物質が血管の壁を傷つけ、「動脈硬化」を静かに進行させます。これが将来の心筋梗塞や脳梗塞のリスクを高めるのです。
どうすればいいの?(改善アプローチ)
- セルフケアの頻度
基本は1日2回以上の歯磨きと、1日1回の歯間ケアです。自分では気づかないうちに進行していることもあるため、毎日の予防が重要です。 - プロフェッショナルケアの頻度
健康な方でも半年に1回の検診が基本です。喫煙習慣がある、血圧やコレステロール値が高いなど、他にリスクがある方は、3~4ヶ月に1回など、より短い間隔でのメンテナンスが望ましい場合があります。
【親世代のために知っておきたい】誤嚥性肺炎
これは、ご自身の問題というより、ご両親など、親世代の健康を守る上で非常に大切な知識です。
なぜ起こるの?(機序)
年を重ね、飲み込む力が衰えると、お口の細菌を含んだ唾液などが誤って肺に入ってしまう「誤嚥(ごえん)」が起こりやすくなります。これが、高齢者の命を奪うことも多い誤嚥性肺炎の原因です。
どうすればいいの?(改善アプローチ)
- セルフケアの頻度
毎食後のケアが基本です。ご本人が難しい場合は、ご家族が介助してでも、1日最低1回、特に就寝前には必ずお口の中をきれいにしましょう。入れ歯の清掃も同様に毎日行います。 - プロフェッショナルケアの頻度
寝たきりの方や介護が必要な方は、訪問診療を行う歯科医師や歯科衛生士による、1~3ヶ月に1回の専門的な口腔ケアを受けることが、肺炎予防に極めて効果的です。
くみ歯科クリニックの医科歯科連携|安心して治療を受けていただくために
お口の健康が全身と深く関わっているからこそ、くみ歯科クリニックではお医者さんとの連携(医科歯科連携)を非常に大切にしています。患者様が安心して治療を受けられるよう、以下の取り組みを徹底しています。
- 詳細な問診と医療情報の共有
初診時には全身の病気や服薬状況について詳しくお伺いし、必要に応じてかかりつけ医と情報共有を行います。患者様の同意のもと、検査結果や治療計画などの医療情報を共有することで、より安全で効果的な治療を実現します。 - 迅速な医科への紹介システム
お口の中の症状から全身の病気が疑われる場合や、歯科治療前に内科的な評価が必要な場合には、森本内科・皮ふ科様や松波総合病院様など地域の医療機関へ、適切な情報と共に迅速にご紹介します。 - 予防を重視した早期介入
全身の病気をお持ちの患者様には、定期的な口腔チェックとプロフェッショナルケアをより積極的に推奨し、お口のトラブルが全身に影響を及ぼす前に早期に対応します。この予防的なアプローチが、将来的な全身の合併症リスクを減らすことに繋がります。
ご自身の、そしてご家族の健康が気になったら
ご自身のことは後回しになりがちですが、お母さんの健康は家族の太陽です。そして、ご両親の健康も、これからますます気にかかることでしょう。
院長自身も二人の息子を育てた母親です。だからこそ、お母さんたちの忙しさも、ご家族の健康を願う気持ちもよく分かります。
少しでも不安なことがあれば、一人で抱え込まないでください。
くみ歯科クリニック
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監修:医師 医学博士 森川洋匡
最終更新: 2025年7月26日