歯ぐきが腫れるのは薬の影響?
薬剤性歯肉増殖と内科のお薬
歯ぐきが厚くなる薬、出血しやすい薬、口が乾きやすい薬をわかりやすく整理します。

「最近、歯ぐきが厚くなってきた」
「歯と歯の間の歯ぐきが盛り上がって、歯みがきしにくい」
「出血しやすいけれど、歯周病だけなのか薬の影響もあるのか気になる」
このようなご相談を受けることがあります。
歯ぐきの腫れの多くは、歯周病、プラーク、歯石などが関係します。
一方で、内科などで使っているお薬が、歯ぐきやお口の状態に影響することもあります。
この記事では、まず歯ぐきが厚く増える「薬剤性歯肉増殖」を中心に説明します。
そのうえで、補足として出血・口の乾き・口腔カンジダ・顎の骨の注意点も、わかりやすく整理します。

大切な結論
歯ぐきが腫れていても、内科のお薬を自己判断で中止しないでください。
まずはお薬手帳を持って歯科医院で相談し、必要に応じて処方医と連携して考えることが大切です。
このページの情報源について
このページは、薬剤性歯肉増殖や口腔乾燥、抗血栓薬、骨吸収抑制薬などについて、歯科・医学系の信頼できる資料をもとに作成しています。
国内情報
日本での実際の歯科治療では、処方医との連携、保険診療、使える薬剤や止血材料が関係します。このページでは「自己判断で薬を止めない」「お薬手帳を持参する」ことを重視します。
海外情報
NCBI Bookshelf、American Dental Associationなどの資料は、薬とお口の関係を整理する補助情報として参照しています。
実際の判断
最終的な判断は、薬の種類、病気の状態、歯周病の程度、抜歯などの処置予定、出血しやすさを合わせて行います。
1. 薬剤性歯肉増殖とは?

薬剤性歯肉増殖とは、特定のお薬の影響で、歯ぐきが厚く、硬く、盛り上がるように増える状態です。
特に目立ちやすいのは、歯と歯の間の歯ぐきです。
進行すると、歯ぐきが歯の一部を覆ったり、歯ブラシが当てにくくなったりします。
歯ぐきが増えると、汚れが残りやすい場所ができます。
その結果、歯肉炎や歯周病の管理が難しくなることがあります。
ただし、同じ薬を飲んでいても、全員に起こるわけではありません。
歯ぐきの炎症、プラークの量、体質、薬の量や期間などが関係すると考えられています。
2. 歯ぐきが厚く増える代表的なお薬

薬剤性歯肉増殖の代表として、次の3つのグループがよく知られています。
| 薬の種類 | 代表薬 | 歯ぐきへの影響 |
|---|---|---|
| Ca拮抗薬 | ニフェジピン、アムロジピン、ジルチアゼム、ベラパミルなど | 高血圧や狭心症などで使われます。歯肉増殖を起こすことがあります。 |
| 免疫抑制薬 | シクロスポリン | 臓器移植後や自己免疫疾患などで使われます。代表的な薬剤性歯肉増殖の原因薬です。 |
| 抗てんかん薬 | フェニトイン | 古くから歯肉増殖との関連が知られています。 |
Ca拮抗薬ではニフェジピンが特に有名ですが、アムロジピンなどでも起こり得ます。
「この薬が悪い」と決めつけるためではなく、歯ぐきの変化を安全に確認するための情報として考えましょう。
3. こんなサインがあれば相談してください

次のような変化がある場合は、歯科医院で確認することをおすすめします。
- 歯と歯の間の歯ぐきが盛り上がってきた
- 歯ぐきが厚く、硬くなった感じがする
- 前歯の歯ぐきが目立ってきた
- 歯ブラシが当てにくい場所が増えた
- 歯ぐきから出血しやすい
- 口臭やねばつきが気になる
- 歯周病の治療をしても腫れが残りやすい
薬剤性歯肉増殖は、見た目だけの問題ではありません。
清掃しにくい場所が増えることで、歯周病の管理が難しくなることがあります。
4. まず大切なのは、歯ぐきの炎症を減らすこと

薬剤性歯肉増殖が疑われる場合でも、最初から薬を変更するとは限りません。
まず歯科で大切になるのは、歯ぐきの炎症を減らすことです。
- 歯石やプラークの除去
- 歯みがき方法の確認
- 歯間ブラシやフロスの使い方の調整
- 歯周ポケットの検査
- 定期的なメインテナンス
歯ぐきの炎症が強いと、薬の影響による腫れも目立ちやすくなります。
反対に、プラークコントロールが改善すると、歯ぐきの状態が落ち着きやすくなることがあります。
5. 薬の変更は、必ず処方医と相談して行います

「薬が原因かもしれない」と聞くと、薬をやめたくなる方もいるかもしれません。
しかし、高血圧、狭心症、てんかん、免疫抑制が必要な病気などでは、お薬を急に中止すると大きなリスクがあります。
歯科医院では、必要に応じてお薬手帳を確認し、処方医と連携します。
薬の変更が必要かどうかは、全身状態や病気のコントロールを含めて、主治医が判断します。
6. 「歯ぐきが増える薬」以外にも注意したい薬

歯肉増殖そのものではありませんが、歯周状態や歯科治療に関係しやすいお薬があります。
| 薬の種類 | 起こり得ること | ポイント |
|---|---|---|
| 抗凝固薬・抗血小板薬 | 歯肉出血が目立つことがあります | 歯ぐきを厚く増やす薬ではありません。自己判断で中止しないでください。 |
| 口が乾きやすくなる薬 | 口腔乾燥、プラーク増加、虫歯、歯ぐきの炎症 | 抗コリン作用のある薬、抗うつ薬、抗精神病薬、抗ヒスタミン薬、利尿薬などで起こることがあります。 |
| 吸入ステロイド | 口腔カンジダ、口の中の炎症、声のかすれ | 吸入後のうがい、吸入器の使い方の確認が大切です。 |
| 骨吸収抑制薬など | 顎骨壊死、抜歯後の治癒不全に注意 | ビスホスホネート、デノスマブ、一部の分子標的薬・血管新生阻害薬など。抜歯前に必ず伝えてください。 |
口が乾きやすくなる薬では、唾液の防御作用が落ちることがあります。
唾液には、口の中を洗い流す、酸を中和する、細菌の増えすぎを抑える働きがあります。
骨粗しょう症治療で使われる量では、顎骨壊死のリスクは高くないことが多いです。
ただし、抜歯や外科処置の前には、薬の情報共有が大切です。
7. 歯科受診時に持ってきていただきたいもの

歯科治療では、歯だけでなく全身の病気やお薬の情報も重要です。
特に次のような方は、お薬手帳を持参してください。
- 高血圧や心臓病の薬を飲んでいる
- 血液をサラサラにする薬を飲んでいる
- 骨粗しょう症の薬を使っている
- 免疫抑制薬を使っている
- てんかんの薬を飲んでいる
- 口の乾きが気になる
- 最近、薬が増えた・変わった
お薬の名前がわかると、歯ぐきの症状との関係を考えやすくなります。
また、歯科処置の安全性を確認するうえでも役立ちます。
8. よくある質問

Q. 歯ぐきが腫れていたら、薬をやめた方がいいですか?
いいえ。自己判断で中止しないでください。
まず歯科で歯周病や清掃状態を確認し、必要に応じて処方医と相談します。
Q. 薬を変えれば、歯ぐきはすぐ戻りますか?
すぐに戻るとは限りません。
歯ぐきの炎症、プラーク、歯周病の状態も関係します。まずは歯石除去や歯みがきしやすい環境づくりが大切です。
Q. 血液をサラサラにする薬は、歯ぐきを増やしますか?
歯ぐきを厚く増やす薬ではありません。
ただし、歯肉炎や歯周病があると出血が目立つことがあります。
Q. 骨粗しょう症の薬を飲んでいます。歯科で何を伝えればよいですか?
薬の名前、飲み始めた時期、注射薬か飲み薬か、がん治療で使っている薬があるかを伝えてください。
抜歯などを予定している場合は特に重要です。
まとめ

歯ぐきが厚く増える薬として代表的なのは、Ca拮抗薬、シクロスポリン、フェニトインです。
一方で、抗凝固薬・抗血小板薬では出血、口が乾きやすくなる薬では虫歯や歯ぐきの炎症、吸入ステロイドでは口腔カンジダ、骨吸収抑制薬などでは顎骨壊死に注意が必要です。
歯ぐきの腫れや出血が気になる場合でも、薬を自己判断で中止しないでください。
お薬手帳を持って歯科医院を受診し、必要に応じて主治医と連携しながら対応していきましょう。
くみ歯科クリニックでは、歯周病の状態だけでなく、服用中のお薬や全身の病気も確認しながら、お口の健康をサポートしています。
参考資料
- StatPearls / NCBI Bookshelf: Drug-Induced Gingival Overgrowth — フェニトイン、シクロスポリン、Ca拮抗薬など、薬剤性歯肉増殖の代表薬を解説。
- American Dental Association: Xerostomia (Dry Mouth) — 薬剤性口腔乾燥、唾液低下と虫歯・口腔感染・歯周感染への影響について。
- American Dental Association: Oral Anticoagulant and Antiplatelet Medications and Dental Procedures — 歯科処置時の抗凝固薬・抗血小板薬の考え方について。
- American Dental Association: Osteoporosis Medications and Medication-Related Osteonecrosis of the Jaw — ビスホスホネート、デノスマブとMRONJについて。
- StatPearls / NCBI Bookshelf: Inhaled Corticosteroids — 吸入ステロイドの局所副作用として口腔カンジダなどを記載。
KUMI DENTAL CLINIC
歯ぐきの腫れ・出血が気になる方へ
お薬手帳をお持ちいただくと、歯ぐきの症状と薬の関係を確認しやすくなります。自己判断で薬を止めず、まずはご相談ください。
☎ 058-337-8785くみ歯科クリニック | 〒501-6064 岐阜県羽島郡笠松町北及1780-1
月・火・木・金 午前午後 / 土 午前 / 水・日祝 休診(祝日が平日にある週は水曜診療)
院長 森川久美子
監修:医師 医学博士 森川洋匡
くみ歯科クリニック|最終確認:2026年06月27日
※本ページは一般情報です。個別の薬の中止・変更は必ず処方医・歯科医師の判断に従ってください。