インフルエンザと
お口のケア
医科と歯科で考える健康管理。
研究・毎日のケア・相談先を解説。

「歯磨きをすると、インフルエンザにかかりにくくなる」――そんな話を聞いたことはありませんか?
お口のケアと感染症の関係は研究されています。ただし、歯磨きをすればインフルエンザを防げる、と言い切ることはできません。 大切なのは、基本の感染対策を続けながら、お口のことも全身のことも切り離さずに考えることです。
岐阜県羽島郡笠松町のくみ歯科クリニックから、研究で分かっていることと、今日から意識したいケア、医科・歯科への相談の使い分けをお伝えします。
最初に知っておきたいこと
1.まずは基本のインフルエンザ対策から

インフルエンザは、インフルエンザウイルスによる感染症です。厚生労働省は、ワクチン、流水と石けんによる手洗い、換気、咳エチケットなどを案内しています。ワクチンは、感染後に発症する可能性を下げ、発症した場合の重症化を防ぐための対策です。接種時期や体調については、かかりつけ医に相談しましょう。[1]
口腔ケアをしているから、ほかの対策は不要――ということにはなりません。 歯磨きと感染対策は、どちらか一つを選ぶものではなく、それぞれの目的に合わせて続けるものです。
2.「口腔ケアとインフルエンザ」の研究、どう読めばいい?

2006年に公表された研究では、デイケア施設を利用する高齢者190人を、専門的な口腔ケアを受けるグループと、自分で口腔ケアを行うグループに分けて比較しました。研究期間中にインフルエンザと診断されたのは、専門的ケアのグループで1人、比較するグループで9人でした。[3]
興味深い結果ですが、読むときには次の点が重要です。
- 対象は高齢者です。 子どもや一般の成人について、同じ効果を確かめた研究ではありません。
- 専門的なケアを比較しています。 自宅での歯磨きの回数を増やすことと、同じ条件ではありません。
- 診断された人数が少ない研究です。 この結果だけで、誰にでも当てはまる予防効果を決めることはできません。
そのため、「歯磨きでインフルエンザを90%防げる」といった伝え方は適切ではありません。口腔ケアの可能性を示す研究はあるものの、日常の歯磨きによるインフルエンザ予防が確立したわけではない、という受け止め方が大切です。[3]
肺炎の研究と、インフルエンザの研究は別です
高齢者施設では、専門的な口腔ケアと肺炎の関係も研究されています。しかし、2022年のCochraneレビューでは、通常のケアと比べて肺炎の発症を防げるかは、まだはっきりしないと評価されています。これは施設入所者の肺炎についての評価で、インフルエンザの予防効果を示すものではありません。[4]
研究の限界を知ることは、口腔ケアをやめるという意味ではありません。歯や歯ぐき、入れ歯を清潔に保ち、お口の困りごとに対応することと、感染症への効果を過大に期待しないことは、両立できます。
3.熱が出て歯磨きがつらい日、どうする?

体調が悪いときは、まず休養を優先してください。厚生労働省は、十分な休養と水分補給を勧めています。ただし、心臓や腎臓の病気などで水分量の指示がある方は、その指示に従ってください。[1]
お口のケアは、体調に合わせて無理のない範囲で行いましょう。
- 歯磨きは、できる範囲でやさしく。 つらいときに長時間続ける必要はありません。口の痛みなどで磨けない状態が続く場合は、歯科へ相談してください。
- 入れ歯のお手入れも忘れずに。 外せる入れ歯は外して清掃し、普段歯科で受けている管理方法に従いましょう。
- むせやすい方には、無理なうがいをさせないでください。 ご家族が介助する場合も、その方に合う姿勢や方法を歯科・主治医に確認してください。
- 発熱したら、歯科へは来院前に電話を。 予約の変更や、急な歯の痛みへの対応を相談してください。
療養中の水分補給では、飲料の選び方が気になる方もいると思います。関連する内容は、スポーツドリンク・経口補水液と虫歯・酸蝕症の記事でも紹介しています。脱水への対応など、医師から指示された補水を歯への心配だけで控えないことが大切です。
4.お口だけでなく、持病やお薬のことも相談してください

医科歯科連携は、「歯科でインフルエンザを治療する」ということではありません。医科と歯科が、それぞれの専門性を生かし、必要な情報を共有することです。
くみ歯科クリニックでは、持病や服薬状況、全身の健康状態も確認し、必要に応じて、ご本人の同意のもとでかかりつけ医との情報共有を行う方針を大切にしています。受診時には、お薬手帳や、お持ちの紹介状・検査結果をご持参ください。[5]
相談先は、次のように考えると分かりやすくなります。
- 発熱・咳・強いだるさなど:医科へ。 インフルエンザの診断や治療が必要かどうかは、医師が判断します。
- 歯の痛み・歯ぐきの腫れ・入れ歯や口腔ケアの困りごと:歯科へ。 全身の体調も含めてお知らせください。
- 持病や薬の変更:医科にも歯科にも。 治療内容に変更があった場合は、受診時に伝えてください。
ご高齢の方、妊娠中の方、乳幼児、糖尿病など一定の持病がある方は、インフルエンザで重症化するリスクが高いとされています。発熱や咳が出たら、早めにかかりつけ医へ相談してください。抗インフルエンザ薬を使うかどうかは医師が判断します。[1][2]
息苦しい、意識の様子がおかしいなどの症状がある場合は、歯科予約を待たず、速やかに医療機関へ相談してください。重い症状では救急要請をためらわないでください。[1]
当院の取り組みは、医科歯科連携のご案内もご覧ください。
よくあるご質問
Q.歯のクリーニングを受ければ、ワクチンは必要ありませんか?
いいえ。歯科でのクリーニングは、インフルエンザワクチンの代わりにはなりません。ワクチンについては、かかりつけ医にご相談ください。[1][3]
Q.インフルエンザになったら、歯ブラシの買い替えは必須ですか?
今回確認した資料だけでは、回復後の買い替えを全員に必須とする根拠は示せません。感染予防のために特別な商品を追加するより、基本の感染対策と普段のお口のケアを大切にしましょう。
Q.熱があるけれど歯も痛いときは、我慢するしかありませんか?
自己判断で我慢し続ける必要はありません。まず歯科へ電話し、発熱と歯の症状の両方を伝えてください。受診方法やタイミングを相談しましょう。息苦しさや意識の異常がある場合は、全身の評価を優先してください。
お口のことも、体調のことも、遠慮なく
くみ歯科クリニックは、お口だけでなく、持病や服用中のお薬、日々の体調にも目を向けた診療を大切にしています。歯磨きや入れ歯のお手入れに困っている方も、ご相談ください。
ご予約・ご相談:058-337-8785
くみ歯科クリニック|〒501-6064 岐阜県羽島郡笠松町北及1780-1
月・火・木・金 午前午後/土 午前/水・日祝 休診(祝日が平日にある週は水曜診療)
院長 森川久美子
※発熱などの症状がある場合は、来院前にお電話ください。
参考資料
- 厚生労働省「インフルエンザQ&A」(予防・療養に関する一般情報)
- CDC「Flu: What To Do If You Get Sick」(米国の一般向け情報)
- Abe S, et al.「Professional oral care reduces influenza infection in elderly」2006年(要旨)
- Cochrane「Mouth care for preventing pneumonia in nursing homes」2022年
- くみ歯科クリニック「医科歯科連携」
- 岐阜県感染症発生動向調査週報・2026年第37週「データ・グラフ編」1ページ
- 岐阜県感染症情報センター「最新の感染症情報・インフルエンザ流行入りのお知らせ」
- 岐阜県「保健所等一覧」(所管区域)
最終確認:2026年9月26日。厚生労働省資料は一般的な予防・療養情報を参照しています。今季の流行規模やワクチン製品の情報を示すものではありません。海外資料は補足として使用しています。本記事は一般的な情報であり、診断や治療を代替するものではありません。持病や体調に応じた個別の判断は、主治医・歯科医師にご相談ください。