毎日のお仕事、家事、そして育児、本当にお疲れ様です。岐阜県羽島郡笠松町の「くみ歯科クリニック」です。

診療室でよく、こんな声をお聞きします。
「先生、この歯はどうせ抜けて永久歯に生え変わるから、そんなに神経質にならなくてもいいですよね?」

そのお気持ち、同じ子を持つ母親として痛いほどよく分かります。しかし、歯科医師としてどうしてもお伝えしなければならない真実があります。

「乳歯の健康状態が、お子様の一生の『顔立ち』と『全身の健康』を決定づけます」

乳歯は単なる「食べるための道具」ではありません。それは永久歯のための「座席予約」であり、顔の骨格を作る「建築足場」なのです。今日は、少し専門的ですが、お子様の将来のために絶対に知っておいてほしい「医学的な理由」を詳しくお話しします。

1. 「乳歯」の4つの重大な任務

乳歯が担っているのは、実は食べる機能だけではありません。それぞれの役割をマンガ風のイラストで見てみましょう。

咀嚼と栄養
咀嚼と栄養

身体の成長に必要な栄養を吸収し、噛む刺激で脳の発達も促します。

正しい発音
正しい発音

前歯が揃っていることで「サ行」などの発音を助け、言葉の発達を支えます。

永久歯の誘導
永久歯の誘導

後継永久歯が正しい位置に生えるための「ガイドレール」の役割を果たします。

顎顔面の成長刺激
顎顔面の成長刺激

噛む刺激が顎の骨を広げ、立体的な顔立ちを作ります。

2. 見えない恐怖「ターナー歯」を知っていますか?

永久歯への「テロ行為」

乳歯の下では、すでに「永久歯の赤ちゃん(歯胚)」が育っています。
もし乳歯の虫歯が進行し、神経が死んで根の先に「膿(根尖性歯周炎)」が溜まるとどうなるでしょう?

その炎症や細菌の毒素が、直下で形成中の永久歯のエナメル芽細胞を直撃し、「一生消えない傷」を負わせます。

  • 変色:生えてきたばかりの大人の歯が茶色や黄色に変色している
  • 形成不全:表面がボコボコと穴が開いている
  • 脆弱性:酸への抵抗力が弱く、非常に虫歯になりやすい

これを「ターナー歯(Turner's Tooth)」と呼びます。一度こうなると自然には治りません。「乳歯を放置した結果、大人の歯が一生治らない傷を負う」。これは親御さんとして最も避けたい事態です。

3. 「噛まない」と顔と呼吸が崩れる

ドミノ倒しのような歯列崩壊

乳歯を虫歯で早期に失うと、奥の「6歳臼歯」が手前の空いたスペースに倒れ込んできます(近心移動)。
結果、本来生えるはずだった永久歯のスペースがなくなり、八重歯やガタガタの歯並び(叢生)、あるいは骨の中に埋まったまま出てこられない(埋伏)原因になります。

噛まないと顔が崩れるイメージ

機能マトリックス説:骨は使わなければ育たない

機能マトリックス説イメージ

医学には「機能マトリックス説」という理論があります。簡単に言えば「骨は、周囲の筋肉や機能(噛むこと)の要求に従って成長する」というものです。

負の連鎖(Vicious Cycle)

  1. 虫歯で痛い、または噛めないため、よく噛まなくなる(軟食化)
  2. 上顎(うわあご)への刺激が不足し、顎が横に広がらず狭くなる(劣成長)
  3. 上顎の天井(口蓋)が高くなり、その上にある「鼻の通り道(鼻腔)」が狭くなる
  4. 鼻呼吸がしづらくなり、「口呼吸」が定着する。
  5. 口呼吸により舌の位置が下がり、さらに上顎が狭くなる悪循環へ。

結果として、顔が細長く、顎が後退した「アデノイド顔貌」や、将来的な睡眠時無呼吸症候群のリスクにも繋がります。「たかが乳歯」が、お子様の呼吸や顔立ちまで変えてしまうのです。

4. 岐阜・羽島の地域事情と「世代間ギャップ」

地域の取り組み:フッ化物洗口

岐阜県内、特に笠松町や羽島市の一部の小学校では「フッ化物洗口」が積極的に行われています。これは素晴らしい取り組みですが、「学校でやっているから大丈夫」と過信は禁物です。
学校でのケアはあくまで「基礎工事」。歯と歯の間のケアや、今回お話しした「顎の成長」まではカバーできません。

おばあちゃん世代からのアドバイスに迷うお母さんもいらっしゃるかもしれません。「昔は虫歯なんて当たり前だった」と言われることもありますが、環境は大きく変わっています。

昭和(1970-90年代) 令和(現代)
🦴 硬い・繊維質の食事
煮干しや硬いパンなど。自然と噛む回数が多く、顎が発達しやすかった。
🍔 軟食(ソフトダイエット)
ハンバーグ、レトルト、パウチ食品。あまり噛まずに飲み込めるため、顎の発達不足が顕著。
🦷 虫歯の洪水時代
C3(神経まで達する虫歯)は当たり前。治療中心の時代。
📱 二極化と新リスク
予防が進み虫歯は激減したが、スマホ等の長時間利用による生活リズムの乱れが新たなリスクに。

ママの不安を解消!Q&A

Q1. 3歳ですが小さな虫歯があります。痛がっていないので様子を見てもいい?

A. 絶対に放置しないでください!

3歳の奥歯(乳臼歯)は、なんと小学校高学年(10〜12歳)まで使い続ける重要な歯です。あと7〜8年も使うのです!
痛みが出る頃には神経近くまで進行していますし、痛みのせいで片側だけで噛む癖がつくと、お顔の歪み(非対称)の原因にもなります。「痛くないうち」が、削らずに済むベストタイミングです。

Q2. 仕上げ磨きはいつまで必要ですか?

A. 小学校中学年〜高学年(10歳頃)まで推奨しています。

FDI(国際歯科連盟)のガイドラインでも、子供が自分自身で上手に磨けるようになるまで監督を続けるべきとされています。
特に生え変わりの時期(混合歯列期)は歯の高さがバラバラで非常に磨きにくいのです。「もう小学生だから」と放任せず、スキンシップの時間と考えて続けてあげてください。

Q3. フッ素は安全ですか?本当に必要ですか?

A. 正しい方法で使えば、安全かつ最強の予防ツールです。

WHOや日本の厚労省も推奨しており、岐阜県でも広く導入されています。フッ素は歯質を強化し、初期虫歯を修復(再石灰化)する働きがあります。
家庭でのフッ素入り歯磨き粉の使用に加え、歯科医院での高濃度フッ素塗布を併用することで、虫歯リスクを劇的に下げることができます。

Q4. 仕事をしていて平日は通えません。土曜日も診てもらえますか?

A. はい、もちろんです!

働くお母さんの忙しさはよく分かります。当院は土曜日の午前中も診療を行っています。また、祝日が平日にある週は水曜日も診療いたします。
共働きのご家庭や、おばあちゃんにお子さんを預けているご家庭も、通いやすいスケジュールをご用意しています。

Q5. 子供が歯医者嫌いで、泣いて暴れてしまいます…

A. 大丈夫です、慣れていますから安心してお任せください。

私たちは女性ドクター・スタッフ中心のクリニックです。いきなり押さえつけて削るようなことはしません。
まずは椅子に座る練習、器具に触る練習から始めます。「歯医者さんは怖くない場所」とわかってもらうことが、一生のお口の健康への第一歩です。

本記事の医学的根拠・参考文献

未来の「顔」を一緒に作りましょう

私たち「くみ歯科クリニック」は、女性院長ならではのきめ細やかな視点で、患者様に寄り添う診療を大切にしています。
口腔外科・審美・訪問診療の経験から、お口の健康が一生にどう関わるかを熟知しています。

「虫歯のない健康な歯と美しい口元は、
お子様への最高のギフトであり、一生の財産です」

「うちの子の磨き方、合ってる?」「歯並びが気になる…」
どんな些細なことでも構いません。まずはお気軽にご相談ください。

くみ歯科クリニック

〒501-6064 岐阜県羽島郡笠松町北及1780-1

女医在籍 土曜診療 駐車場あり